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俳句エッセイ  湯布院おんだ

プロペラ機が伊丹空港を発つと、2007年小晦日(こつごもり)のこの日は快晴で、鳴門はうず潮までが見下ろせた。瀬戸大橋をすぎてまもなくしまなみ海道が尾道と今治を異なった橋でつなげているのが見える。四国の、長いながい佐多岬にほとんどくっつきそうな佐賀関半島はもう九州上空だ。一時間足らずで大分空港に着陸した。湯布院で一泊。
翌日、JR大久線日田で下車、秘境小鹿田(おんだ)を訪ねた。
小鹿田には登り窯が3基ありそれを10家族あまりで守り続けている。デパートに出荷したり茶陶を作らず、バーナードリーチや柳宗悦が絶賛したころと同じたたずまいで、唐臼がのどかな音を響かせていた。
山からしぐれはじめて、小屋の外に積んである小鹿田焼の茶碗に細かい雨がたまりはじめた。うす暗い小屋のなかをのぞくと、おじいさんがひとり蹴りろくろをまわしている。おばあさんが明後日のために餅をむす匂いがしてきた。

 小晦日くもの巣光る日田天領

 とびかんな茶碗にたまる冬の雨

                               馬齢

「とびかんなや刷毛目が小鹿田焼を作っているのではないよ」陶芸家の娘が言った。「小鹿田の土と火と歴史が作っているのよ」。私は、小鹿田に生まれて陶器を焼き続け次代に伝えていくしあわせを想像した。同時に、山の彼方のさいわいを探して、峠を越えていく人のしあわせのことも考えた。

季語:小つごもり  大つごもりの前日すなわち12月29日をいう。冬
        冬の雨    細かく冷たい冬の雨。冬