命の水の泉から  竹下弘美 


松茸

 

「デンバーの大田ですが、松茸狩に行ってきたので、ほんの少しお送りしますね」という電話が入っていた。「大田さんって?」

思いだした。あの方だ。昨年の暮れ、クリスマスの3日前のこと、夜の11時半に電話が鳴った。教会の亜沙子ちゃんからで、彼女がとてもすまなそうに話してくれた内容は次のようだった。

デンバーの飛行場が雪で閉鎖されていたこと。飛行場は開かれたが、その朝、関西空港からデンバーに向かおうとしている日本人三人(デンバーにいる娘 さんを訪ねる八十二歳のおばあちゃまと彼女のお孫さんである若い女性ふたり)が、英語がわからずサンフランシスコ空港で足止めをくっている。誰かサンフラ ンシスコで助けてくれる人がいないか、泊めてくれる人がいないか、その日一日中、最終便までキャンセル待ちをしたけれど乗れず、翌朝また朝早く空港に出向 かなければならないから、サンフランシスコの飛行場に一番近い私たちが最適ではないかという話だった。ここには誰も知り合いがなく、LAの教会の方を通し て回ってきた話だという。なにしろ、行って少しでも力にならなくてはと、すぐ夫とでかけた。ユナイテドの閑散としたカウンターに三人を見つけた。.デン バーにいる娘さんにも連絡がとれた。その夜は何しろ、我が家で一泊してもらうことにした。我が家に着いたのは朝の一時。三時間だけ眠り、四時にまた飛行場 に向かったが、カウンターはあぶれた人でいっぱいだ。半日並んだ結果、確実に乗れる二日後のクリスマス当日出発の切符を手にした。モテルの手配をし、ちょ うど、週末だったので、サンフランシスコの観光にもお連れし翌日は教会のクリスマス礼拝へ。その間、デンバーの娘さん夫婦からは「見ず知らずの方にご厄介 になりまして」と恐縮している電話が何回もきた。それが大田さんだ。夜はまたクリスマスイブ礼拝だったので、教会は生まれて初めてだという、三人を教会の 皆が歓待してくれた。イブ礼拝の後はクリスマスイルミネーションのきれいなところにお連れして、喜ばれ、翌朝のクリスマスの朝、彼らをデンバーに送った。

私たちとしては当然のことをしたにすぎないのに、その三人はとても感謝していた。その時のお礼が松茸になってきたのだ。

「三時間半かけて隣の州のワイオミングまでいって採ってきました」とのこと。そんなに貴重なものを送ってくださったのだ。「さあ、これを松茸ご飯にして教会の皆と食べよう」松茸は高価なので、何年も口にしたことがない。

「これらの最も小さい者のひとりにしたのは、すなわち私にしたのである。マタイ25-40」

 

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