命の水の泉から  竹下弘美 


捨て猫

 

教 会での祈祷会が始まってしばらくたってから、外で仔猫の鳴き声が聞こえ始めた。絶え間ない。猫好きな私としては、気もそぞろ。お祈りどころではない。も し、祈祷会が終わる時に、まだその猫がいたら、私は家に連れて帰ろうと心に決めた。その反面、そのうちにどこかに行ってしまってほしいという思いもあっ た。祈祷会が終わって外に出てみた。いたいた。とてもきれいなベージュ地にステキな柄の線が入った中猫だ。たぶん五ヶ月くらいの雄だろう。

どんどん、礼拝堂の中に入ってきて、歩きまわり、鳴き続けた。お腹もすいているようだ。躊躇することなく、私はこの猫を連れて帰ることにした。どう やら、その前日に誰かが捨てにきたらしいということだ。教会だったら、拾ってくれる人がいるだろうと思ったのだろうか。人懐こく、車の中でも歩きまわって いた。夫も私の決断に同意。というのは、この猫を飼ってくれるであろう友人が浮かんでいたからだ。もし飼い主が見つからない場合には、我が家にはすでにパ フという猫がいるが、二匹飼ってもいいという気持ちだった。パフになじんでもらうため、この猫を一つの部屋に入れ、隔離した。なじむどころか、姿は見えな いのに、パフの怒り方といったらなかった。その猫を閉じ込めた部屋の前で、唸ったり、ついにはエサも食べなくなった。やはりもらってもらうほかないだろ う。目星をつけていた友人に電話をし、仕事の帰りに見にきてもらった。彼女は日本からきたキャリアレディ。その上仕事の後は大学で受講し、先日は会社から その労を表彰されたくらいの仕事人間だ。でもときどき、家族がほしいと、寂しくなるということをきいていた。猫を飼うことが、ピッタリなのではないかと前 から思っていた。

猫を飼ったことのない友人は不安がったが、ちょうど連休だったので、ためしに家に連れて帰っていった。2、3日して、心配になり、電話をすると、す でにレオと言う名前をつけていた。ということは彼女は飼うことにしたのだということがわかった。そして、いっしょにお医者さんにつれていったところ、なん と、雌で10ヶ月くらいだという。すぐ、避妊手術の手配をした。名前も雌なのでレアに変わった。

レアちゃんは彼女の行く所、行く所についてまわり、姿が見えなくなると、鳴いて不安がるという。きっと前に捨てられた悪い思い出が恐怖となっているのだろう。でも、もう大丈夫。「これから、一生面倒みるか」と彼女が言ってくれているから。

私達にも一生を面倒見てくださるお方がいる。だから私たちは怖がる必要はない。

「私は決してあなたを離れず、またあなたを捨てない。ヘブル13−5」

 

トップに戻る



Home