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命の水の泉から 竹下弘美
奈 良市で16歳の少年が母と幼い妹と、弟を焼死させた事件は人々とに驚愕の念をおこさせたことだろう。勉強ばかり強いた父をいつも憎んでいた青年だった。こ の事件と同じようなバックグランドをもった「小さいころから、父親を殺したいと思っていた」という青年に会った。松前翼(たすく)君19歳。素晴らしい賛 美を作り、今から主の働きのために出ていこうとアメリカで訓練を受けている青年である。 彼の母は熱心なクリスチャン、父は教会には通っていたが、翼君の目からは、本音と建前を使いわける、大人。そして父にとっては勉強して,この世で出 世することのみが第一のプライオリティであった。良い成績をとらないと、父親に殴られることもあったという。けれど、彼は父親の権威の前に逆らうことがな かった。怖かったのだ。大学院での勉強にいそしむ父のため、母親が看護婦をしながら、すべて家事育児を担っていた。価値感が違う二人の間ではいさかいが絶 えなかった。いつも父親に逆らえないでいた彼だったが、ある時初めて両親の争いの最中に「やめろよ」と声を発することができた。はじめて壁が破れた第一歩 だった。進学校として有名な高校に入った直後のことだ。そのころから、彼は髪を染め、ピアスをし、それを注意する先生たちに理由を求めた。誰ひとり、真剣 に彼に対峙してくれる教師はいなかった。先生達の中に父を見ているようで、大人が信じられなかった。 万引も常習であったが、ある日、盗みに入ったところで、「神様僕は本当はこんなことはやめたいのです。本当はあなたの愛を伝えたいのです」と祈っ た。教会に小さいころから通っていたので、神の愛はわかっていた。その日彼は捕まった。迎えにきた母親は話をきいてくれ,祈ってくれたが、その母に彼は毒 づいた。「大人だって裏で、汚いことやってるじゃないか」と。リビングルームのコーナーで母親は泣いていた。 「神様、あなたは本当にいるのですか」そう問うた彼の目の前に今までの罪が次々と思い起こされてきた。「神様を知っていたのに、俺って最悪じゃん」 と思った次の瞬間、パノラマのように、過去の映像が浮かんできた。いつも自分が寂しかったとき、一人の男の人がそばにいてくれたこと、小さいとき、友達が 居ないなと思ったとき、肩を抱いていてくれた男の人がいたことを。 「その存在がジーザスだっていうことが心からわかりました。さっきまで、でかい口を叩いていたのに、滝のように涙が出て、聖霊にみたされたのです」。 そして、彼はその中から生まれた歌、“Jesus ただ一人だけ”という歌をギターを弾きながら歌い続けている。将来はこの主の愛を伝えたいという思いにかられながら。
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