命の水の泉から  竹下弘美 


トール・フリー

 

私たちはベイエリアと呼ばれるサンフランシスコ湾を囲む地域に住んでいる。家はサンフランシスコ湾をへだてて西に位置している。教会は湾の反対側にあるから、橋を渡って行かなければならない。

サンフランシスコ湾にかかる橋は三つある。北からベイブリッジ、サンマテオブリッジ、少し南にある、ダンバートンブリッジ。私たちが使うのは、湾の ほぼ真ん中にあるサンマテオブリッジだ。この橋は三つの中で一番長く、7マイルある。橋の上から晴れた日にはサンフランシスコのダウンタウンが見え、とて も美しい。東に渡るのには料金(トール)は取られないが、西に帰ってくる時には料金を払わなければならない。私たちが南カリフォルニアから引っ越してきた 15年前にはたった1ドルだったのが、今は3ドル、支払わなければならない。来年からは4ドルになるそうだ。それでも日本に比べればずっと安いが、時とし ては1日に2回教会に行くこともあり、そうなると6ドルだ。 ラッシュアワーだと、二人以上乗っている場合には無料になるが、たいてい通るのは日曜日か、 夜遅くということになるから、払わずにすんだことはない。払うのがいやだったら、湾の下の方までくだって、陸続きを帰ってくることもできるが、それは遠す ぎる。

先日、夜の祈祷会の帰り、3ドル用意して料金所に近づくと、前の車がかなり長い時間かかってお金を払っていた。「何をもたもたしてるんだろう」と短 気な夫。いつものように間際になって窓を開けた。あまり早くから窓をあけると、海風でお金が飛んでいってしまうこともあるからだ。実際私はその苦い経験を したことがある。

ようやくその車が走り出たので、その後につ続いて前に出ると、料金所のお兄さんが
「前の車があなたの分も払っていってくれたよ」と言うではないか。
「えっ、そんなことってある?このアメリカで。だって前の車の人は赤の他人よ」

私と夫は全速力でその車を追いかけた。もしかして知っている人ということもなきにしもあらず。でもあの車には見覚えがない。追いかけてみたが、まる で、夢のようにあの車は陰も形も見えなかった。料金所のお兄さんだって、そのお金を自分のものにすることができたのに。わけがわからなかった。そして、も しかしたら、あの車の運転手は私達だけではなく、他の人達の分も払ってくれたのかもしれないと思った。

なんだか、神様が私たちにしてくださることみたいだ。何の利益ももたらさない、無きに等しい私のためにイエスさまは死んでくださったのだから。

私達は、それからというもの料金所を通るたびに又前の車が払ってくれるかな、などと期待しながら通っている。

 

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