命の水の泉から  竹下弘美 


ハレクラニ(天国の家)

 

十 年ほど前、知人からサンフランシスコに旅行にくる親戚の大学生に何かあった場合の連絡先とさせてくれ、と依頼された。それでは一日は我が家にどうぞ、と宿 を提供した。それがK君との出会いだ。K君は友人と二人でやってきた。とてもほがらかな快活な青年で、将来はどうしても人間相手の仕事、できれば、ホテル マンになりたいということだった。初対面だったが、誰にでも好かれる彼の性格からして、ピッタリの仕事だと思わされた。なにしろ、いっしょにいるととても 愉しい青年だった。

その時は旅行だったが、彼は大学を卒業すると目的を遂行すべく、ホテルの勉強に米国にやってきた。まず、語学学校に行き、それから他州のホテル専門学校を卒業し、着々と夢の実現に向っていった。インターンシップはサンフランシスコのホリデーインでする ことになり、そのころよく我が家に出入りした。そして、我が家での家庭集会で、将来マウイのリッツカールトンに勤めたいと抱負を語った。 なんとその席で人脈がみつかり、それがきっかけでリッツカールトンの試験を受けて合格。就職することができた。

夢の職場でもいろいろなことがあったらしい。三年ほどしてから、ホノルルの最高ホテル、ハレクラニ(一泊最低350ドル)に転職したかったが、その ときには、ビザがうまく行かずに断念して日本に帰らざるをえなくなった。ところが、ちょうど、タイミングよく六本木ヒルズのオープニングの時で、東京グラ ンドハイアッツにアシスタントマネージャーとして就職することができた。私は東京に帰ったとき、彼をグランドハイアッツに訪ねた。ホテル内で忙しく働いて いる彼を呼びだすのは大変だったが、受け付けで「ご関係は?」ときかれて、「母親のような者です」と答えると、すぐ呼びだしてくれた。

そして先週背広姿の彼の写真が送られてきた。ホノルルからだ。今回は、今までの経験を生かしてなんと、夢であったハレクラニに就職できたのだ。ハワイなのに、背広を着て働かなければならないほど、高級なホテルなのだそうだ。私は母親代わりとして、いつ かタダで泊まらせてもらおうと陰謀を企てている。

それにしても本当に彼は執拗に自分のしたいことを追い求めてきた。そして、ハレクラニ(ハワイ語で天国の家)に辿りついたのだ。

私たちは求めたら必ず、神さまは与えてくださる方であることを忘れがちだ。ヨハネ第一の手紙には "また求めるものは、何でも神様からいただくことができます"とある。天国は奪うものなのだ。そして、求めてやまないときに天国の家に辿りつくことができるのだ。

 

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