■知ってるつもりの心理学(5)
−より良い人間関係のためにー

-共感と理解への戦い-

 神崎直行 教授(精神医学・経営心理学博士)
     サウスベイ教会協力者・アドバイザー



   

 友人の奥さんが夏の疲れから高熱を出して寝こんだ。平熱が低い人だけに少しの熱 も体に響く。医者に見せたところ、腹部のヘルペス、膀胱炎の併発、下痢症状と風 邪、さらには手の平に切り傷とそこに細菌による炎症、足にまめと水泡と幾重にも 弱った体に痛みを加えた。医者も何処から手をつけたら良いのかと困惑した。

 それより本人の痛みと苦しみは、いかがなものか。「痛い痛い、ずきずきする。体 が熱い」
と医者の治療にもかかわらず幾晩も続いた。友人も奥さんの痛みを少しでも和らげよ うと、 患部を冷やしたり、さすったりと痛みを分かち合おうと一生懸命であった。

 しかし、一週間たっても痛みの合併症と言うか、重なる痛みが収まらず、ただひた すら神に祈るしかなかった。 友人も奥さんのその痛みを真剣に受けとめていたが、実際に奥さんの苦しみを見て、 簡単に「痛いだろう、すぐ直るよ、大丈夫、がんばれ!」とは逆に言えない。

 「私には大きな悲しみがあり、私の心には絶えず痛みがあります」(ローマ人への手 紙9:2)

 パウロのような大きな心を持ちたいものと思った。 精神科医の神谷美恵子もその著書の中で、「何故私達でなくて、あなたが?」と目の前にいる患者達を診て言葉にならない叫びを上げた。

 共感とは、悲しみ苦しみにある人と同じ目線、同じ立場でその心のうめきを分かち 合う事だと理解はするが、実際には、“同じ”というレベルには立ちたいが、結果は ほんの少し近づくだけのことでしかない。

 「分かるよ」なんて簡単に言って欲しくないと、クライアントの声が聞こえる。 友人も奥さんに、「痛いだろう、苦しいだろう、先生の薬がすぐに効いてくるから ね」とは言うものの、その様子を見ていると、却ってそんな口先だけの“なぐさめ” の言葉が白々しくなってくるのが、またたまらない。黙って、ただそばにいて耐えて いるしかない。

 「何かして欲しいことはない?」と聞いても、痛みをこらえることしかない奥さん にとっては、「言わなければやってくれないの!」と苛立つであろう。身体をさすっ たって痛いものだ。空気が動いても、人がセキをしても響くものだ。どうしたらいい のか?

 人の苦しみ痛み悩みの共感と言っても、理解するのさえはばかるものだ。さりと て、自分を傷つけ同じ痛みを味わえということではない。

 共感の字をばらせが、“共”すなわち共にあれ、共にあって神の下にあることを感 謝することとなろう。苦しい時悲しい時、共にある人がいるということが大切なこと なのです。


神崎直行博士 教授(精神医学・経営心理学博士)
サウスベイ教会協力者・アドバイザー


神崎直行博士プロフィール

慶応義塾大学卒。医学博士(精神医学)、経営学博士(経営心理・臨床)。カリフォルニア・ウエスタン精神医学研究所。大学院で教えるかたわら、臨床活動、著作活動、講演会と超多忙。詩人でもある。著書に『こころの詩』、『こころの出逢い』、『こころ語り』、『成功物語』、『格差の商法』、『成功への戦略実践』、『客づくりの経営戦略』など。経営コンサルタントおよびサイコセラピスト・心理分析に30数年にわたって従事。ここ10年は、大学の研究室で経営における意志決定の心理と働く者の精神医学的内的開放・潜在脳力開発の研究に取り組む一方、大学院生のゼミ教授としても活躍している。


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(安藤迄)

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