■知ってるつもりの心理学(2)

-認めることの難しさ-

 神崎直行 教授(精神医学・経営心理学博士)
     サウスベイ教会協力者・アドバイザー



   

 武者小路実篤に「人は人 我は我なり されど仲よき哉」という詩があります。これを「あなたはあなた、 私は私で好きにするわ。でも喧嘩している訳ではないわ」と解釈する人はいるでしょうか? むしろ、あなた を思いやっている、本当はいつも心にかけているけれど、決して土足で人の家に上がるように心の中まで踏み 込まない。相手を十分に認めて、しかもさりげなく心にかけ、気づかってあげている、というふうに理解したいつもりです。

 だからこそ、また私もあなたが、いつも心にかけ、心配して下さっていることをよく知っています。こんな 背景をもって、無理な干渉はしないで、でもいつも気づかうという、これこそ、"本当の仲のよさ"ではないで しょうか。"あなたはあなた、私は私よ"と突っ張ってしまえば、仲良くなるどころか、喧嘩になってしまう。

 人間の心理のやっかいなところは、自我をいかにコントロールできるかということになりましょうか。無く してしまうと、またこれは自分そのものの喪失となり、強すぎると自己中心的で、人との交わりが困難にもな ります。人は自分自身の内面を犯されたくないという、自己防衛能力をもともと持っているものです。

 そのために、人からの、圧力に敏感に反応する機能を備え、それが内的力が強い時は、外圧にも十分耐えら れるが、むしろ弱い人こそ直ぐに抵抗するものです。私は人とは違う。批判する、けなすという行動に出るの です。自分が批判されたり、非難されたり、何か言われると必要以上に過剰に反応していく。プライドが高い 人、自尊心の強い人、自信過剰な人など要注意。裏返しは、自分の弱いところをつかれるととても嫌なのです。

 「あなたは、いつも自分だけが正しいと思っている」と責めたり、「いつも、いつも私に意見を言う」など と、素直になれない。結局、自分は「いつも一生懸命やっている」という自身と自負があって、人から何かいわれる筋合いはないということになるのでしょう。完全主義が強い人に多いのかもしれない。

 カウンセリングにおいて、受容というプロセスがあります。それは"在るがままを受け容れる"ということで あり、そのカウンセリングの場にある両人にいえることで、カウンセラーだけがクライアントを受容するのではなく、クライアントもカウンセラーを受容するのです。

 しかし、"受容する"と簡単にいうけれど、これは大変難しい。ともすると、頭で"わかった"ということにな りかねない。つまり"わかったつもりになっている"自分の錯覚が多いものです。受容するより前にむしろ"相 手の存在そのものを認める"ことから始めることなのです。自分と同じ悩みを持つ人間なんです。
     
                  神崎直行博士 教授(精神医学・経営心理学博士)
                              サウスベイ教会協力者・アドバイザー


神崎直行博士プロフィール

慶応義塾大学卒。医学博士(精神医学)、経営学博士(経営心理・臨床)。カリフォルニア・ウエスタン精神医学研究所。大学院で教えるかたわら、臨床活動、著作活動、講演会と超多忙。詩人でもある。著書に『こころの詩』、『こころの出逢い』、『こころ語り』、『成功物語』、『格差の商法』、『成功への戦略実践』、『客づくりの経営戦略』など。経営コンサルタントおよびサイコセラピスト・心理分析に30数年にわたって従事。ここ10年は、大学の研究室で経営における意志決定の心理と働く者の精神医学的内的開放・潜在脳力開発の研究に取り組む一方、大学院生のゼミ教授としても活躍している。


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